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大阪都構想 スマホで投票できたら勝てたのか?ネット投票は本当に投票率をあげられるのか

5月17日、注目の大阪都構想の是非を問う住民投票が行われました。結果は僅差で否決。統治機構のしくみを変えるという歴史的な試みが実現されないのはとても残念ですが、橋下徹市長をはじめとする推進に尽力した方々には敬意を表します。

個人的には大阪都構想は実現に向けて進んで欲しかったと思います。若者の投票率が低かったとか既得権層の老害が原因であるとか、否決になった理由はいろいろ取り上げられていますが、政治的規制の配慮から情報伝達があまりにもアナログ手法しか選択出来なかったという点に憤りを感じています。

効率が悪くて費用のかかる説明会

住民投票前の大阪都構想の説明に費やした費用は、朝日新聞デジタルによると40ページ168万部のチラシ作成・配布費用が7,200万円、13日間に39回開催された説明会の費用は2,800万円とのこと。
説明会の動画は当初公開されていたが産経WESTによると「行政の活動と政治活動が混同される恐れがある」として、27日の住民投票告示後に自粛したとしている。と記載されています。
3,000万円の経費を使って説明会は40回くらいしか開催できない。それを補完するための動画配信は投票後ならOKという理不尽な規制。統治機構の仕組みを変えるという重要な可否を問う選択を住民に判断させるにはあまりにも過小であったのではないでしょうか。
それでも投票率は66.83%という高水準でしたが、もっとしっかりと深く住民に都構想の情報伝達がなされていれば、結果はどちらに転んでも将来の建設的な判断材料となった気がしてなりません。

大阪都構想は本当に説明不足だったのか?

大阪都構想については当初からわかりにくい、説明不足といった声は少なくなかったようです。実現のためには他にもいろいろな問題があったでしょう。住民に都構想を十二分に理解してもらうためには、情報をわかりやすく伝えるという点にも注力していたと思いますが、政治的な規制等あったとはいえ、当サイトのようにICTの活用促進を生業としている立場でみるとちょっとだけ不親切な広報活動に感じました。

スマホファーストでない都構想のWebサイト

ニールセンによるとPCでのインターネット利用者は2013年から600万人減少し、スマートフォンでの利用者は1600万人増加している。
ニールセン「Digital Trends 2014」より転載
つまり、少なく見積もってもネットを見る人の約半数はスマートフォンを利用しているのです。大阪の未来を担う若者に限定すればさらにその割合は大きくなるでしょう。
大阪都構想のサイトを見てみるとモバイル対応になってはいますが、スマホファーストにはなっていなかったようです。PC閲覧をメインに作成し、モバイルはオマケといった印象です。

大阪都構想のスマホ表示画面例
スマホ用大阪都構想のビュー一例
スマートフォン用の表示は、漫画などわかりやすく記載しているページでも上記のように画像をピンチアウトしないと見えないし、拡大表示すると画像がぼやけてしまっています。
結果論ですが、メインターゲットの主要利用デバイスへの対応が不十分だったといえます。

住民のリテラシーに合わせた情報が少ない

大阪都構想の公式サイトを熟読してみました。住民が疑問に思うことや知りたいことに対して非常に細かく広範囲で情報を掲載している印象でした。
しかし必要な情報はあるのですが、大半がテキストなのです。文字量がすごく多い。統治機構の仕組みを変えるという前代未聞の試みですから、容易に説明し難いのは当然ですが、本当にわかりにくい。

構想「賛成」の4つのポイント
構想「賛成」の4つのポイント

一番わかりやすく伝える必要のあるポイントコラムで、この文字量。図版はひとつも掲載されていません。

構想実現の仮イメージ
構想実現の仮イメージ

だれもが知りたいであろう都構想が実現された時の仮想イメージのコラムも文字ばかりです。
冊子ならともかくWebページでこの文字量は対象者のリテラシーを全く考慮していないと言わざるを得ないでしょう。

なぜインフォグラフィックスを使わなかったのか?

情報を視覚化してわかりやすく伝えることが出来るインフォグラフィックスは、スマートデバイスと相性がよく情報を素早く簡単に表現したい場面でよく利用されています。複雑で難しい事象ほど分かり易く伝えるためには積極的に図版を使うべきです。

「大阪都構想」でGoogleイメージ検索をしてみました。残念ながら一目でこれが大阪都構想!と理解できる図版は見当たりませんでした。

「大阪都構想」Googleイメージ検索結果の例
「大阪都構想」Googleイメージ検索結果の例

たとえば、「消費税5%増税を考える」の様な大阪都構想のインフォグラフィックスがあれば、もっと多くの人にわかりやすく伝えることができ、関心を高められたかもしれません。

インフォグラフィックギャラリーより転載

スマートフォンで住民投票できていたら結果は変わっていたか?

ネットで投票できたら投票率はあがるという意見を否定しませんが疑問はあります。ネットで安全に不正なく投票できる環境が投票者の手間がかかることなく用意できれば投票率は上がると思います。
しかし、推測しか出来ませんが、ネット投票できるセキュアな環境を構築するには、住基カードを取得して電子証明を登録してPCやスマホにアプリをインストール・設定といったe-Taxくらいの手間は最低でも投票者にかかってくるでしょう。マイナンバー制度が施行されれば、変わってくるかもしれませんが、これは現行制度の不在者投票や近所の投票所に足を運ぶより間違いなく面倒です。結局、行政改革に興味を持たず住民投票や選挙に関心が低い人は、参加しないのではないかと考えてしまいます。
ネット投票が実現してもスマートデバイスを利用する人達のリテラシーに合わせた情報スタイルで発信できなければ何も伝わらない。これでは現状と同じで関心の低い人にはリーチできない。
大阪都構想の住民投票も投票の手段がネットなどに拡大していたとしても結果は同じだったかも知れません。

これからもスマートフォンを始めとするスマートデバイスの普及はどんどん進んでいきます。皆がいつでも・どこでも情報にアクセス出来る環境はほぼ整っているといえます。情報発信者側は、誰にでも見やすく、わかりやすい情報を用意しないと本来の効果を期待できないでしょう。

橋本徹市長には、議員を辞めても、大阪でなくても良いので日本の未来のために活躍して欲しいです。これからも応援しています。

※このBLOG(99 Lebensart:旧名 スマートデバイスで仕事を変える!)は、株式会社アイテムのテストマーケティングサイトです。

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